シリコンバレーマンのトビタテハウス体験記【ホームレス大学生が、トビタテシェアハウスで暮らすまで気づかなかった「インスタント・ゴマ擦り・海外留学」より大事なこと】
※今回の記事は、トビタテハウスに二ヶ月ほど住んでくれていたシリコンバレーマンが書いてくれました。恐らく最も遅く留学が始まった3期生の1人。1期生から3期生まで縦の繋がりをたくさん作ってくれたナイスガイです。
ぼくの大学は、京都にあるけれど、東京に行きたくなったので2015年の8月から上京した。
「上京することになったので、この手のネタでバズらせて、コンタクト募集すれば家が見つかるのでは」という甘すぎる考えで便所のラクガキの様なブログを始めて見た。すると、本当に一軒家を無料で貸していただける人が見つかったので年内までそこに住んでいた。年始から住む場所を探していたところ、できたばっかりのトビタテシェアハウス家賃が格安だったのでハイエナのようにたどり着いた。
さて、そんなぼくが、トビタテシェアハウスで暮らしたこと学んだことは次の3つである。
1.“インスタント”より“手料理"
2.“ゴマ擦り”より“本音"
3.“海外留学”より“国内もまた留学"
1.“インスタント”より“手料理”のほうが美味しい
資本主義では、効率、合理化が大切だ。
だから今日では、コスパという言葉が流行り、重視される。
安い、うまい、スピードを兼ね備えるインスタント料理は、その象徴だろう。
上京してきたので、金銭的に余裕がなかったぼくは、インスタント料理がほとんどだった。
頭のよくないぼくは、バイト先のみんなはいつも食事に1時間くらいかけているけど、ぼくはインスタントな上に買い溜めしていたので10分弱でたべおわっていたものだった。残りの50分をぼくは、コードを書いたり、勉強や趣味に費やすことができた。
安いし、美味しいし、誰にも気を遣わないで済む。食べることに多くの時間をとられないのでやりたいことに時間を割ける。悪くなかった。悪くなかったが、最高でもなかった。
(カメラ目線でドヤ顔の人は無視していいと思う)
しかし、トビタテシェアハウスに過ごしたことで考え方が変わった。
シェアハウスでは、料理を作るのが得意な人がいた。だから、毎日のように自慢の手料理を住民に振る舞ってくれていた。味も本当においしかった。インスタントの代わりに、みんなといっしょに手料理を食べたことで自分の労働時間や勉強時間は減ったけれど、生産性は上がったと思う。メリハリがつき、集中力が増したからだ。同じアウトプットの質と量なら、時間は少ないほうがいい。栄養のある料理は、その手助けになる。
いまぼくは、アメリカ西海岸に留学しているけれど、どうもアメリカの食事はぼくに合いそうにない。本当においしくない。日本食は素晴らしい。
トビタテシェアハウスで食べた手料理が恋しい。
トビタテシェアハウスで食べるご飯は、ご飯もおいしくて最高で、過ごす時間も楽しくて最高だった。
2.“媚び”を売ったり、表面上で仲良くなった関係より“本音”で言っても嫌われない、引かれない関係が好き
高校のときは全国屈指のサッカー部だったので、超体育会系だった。監督と先輩が世の中の神であるような世界だった。
だから、監督や先輩のゴマを擦る人をたくさん見てきたし、監督や先輩もまんざらでもない感じに違和感を感じていた。また、
ぼくは、特定の友人の愚痴を言いながらも、その友人がいるときは、愚痴を言わずにいつも釣るんでいる友達の光景を今までよく見てきた。
「そんなに陰で悪口を言うなら、じゃあなんで縁を切らないんだろう?」と疑問で仕方なかったし、気持ち悪かった。よく原因を探ってみると、これは、『「相手と意見が違う」と「相手を嫌い」がごっちゃになってる』からだった。本音をその友達にぶつけることで嫌われることが怖かったのだ。
しかし、トビタテシェアハウスの住民のあるストーリーを聞くと、やはり自分は、“媚び”を売ったり、表面上で仲良くなった関係より“本音”で言っても嫌われない、引かれない関係が大好きだなと思えるようになったし、そういう友達に囲まれて過ごしたいなと思った。
A君の進路を決めたTさんのアドバイス
A君とTさんはトビタテの2次審査であるグループディスカッションで同じグループだった。だからお互いについて留学する前からよく知っていた。
ーーA君 「哲学勉強してるやで〜。勉強大好きマンです。よろしくお願いします〜」
ーーTさん 「素敵ですね。よろしくお願いします」
1年後に留学を終え、帰国後
ーーA君 「金銭的にいろいろあって、就職するやで〜。ちなみに、就活は4日で終わったよん。」
ーーTさん 「え、あんなけ勉強、哲学って言ってたのに、論文も書かずに卒業するんだ(笑)」
A君はこのTさんの一言が心に刺さったという。おそらくA君は次のような顔をしたに違いない。
しかし、A君は、この鋭い一言のせいでTさんを決して嫌いになったりしなかった。むしろ、以前より好きになったという。A君は、このTさんの一言がきっかけで内定を辞退し、本当に自分がやりたいこと(哲学や研究)を突き進むことにした。
A君とTさんのような媚びに因われない本音の関係をこのシェアハウスでは他にも聞くことができた。
こういう健全な関係がぼくは好きだ。本音を言うことは大切。ぼくは、たまに本音を言って、友達や学校の事務の人に怖がられたり引かれたことがあったけど、それはその友達や事務の人のことが生理的に受け付けなかったからとか人間的に嫌いだったからでは決してない。それはちょっと論理的におかしいんじゃないかと感じたから自分の意見をぶつけてみただけだ。
ただし、とくにぼくの場合は気をつけないといかないことがある。住民に言われたある一言が今でもよく覚えてる。
コウ君は、自覚も悪気もないんだろうけど、本当にたまに言葉が強すぎる、鋭すぎるときがある。それは、過去に他人に言葉で傷けられたことがあって、だから、これくらいなら自分と同じように相手も耐えれるだろうと無意識に考えてるからじゃない?
これは当たっているかもしれない。意識して気をつけよう。
3.“海外留学”が全てより、“国内もまた留学である"という認識
この項については、ぼくが公開している
文系初心者が東大理系エンジニア集団”Progate”で、エンジニアとしてインターンするまで気付かなかった「1人・教材・海外留学」より大切なこと という記事からそのまま引用したい
留学という単語を聞いたとき、多くの人が思い浮かべるのは、アメリカ、イギリスなどの海外の国や、大学というある種の型や形式ではないだろうか? また、海外留学を経験した人にありがちなのは、「日本には多様性がない」と日本をDisる行為だ。かくいうぼくも、もともとそうで、海外思考が強かった。「日本なんて多様性がない」と知ったかぶり、海外がすべてだと思っていた。しかし、今回の経験を通して、理解を改め、ぼくにとっての留学を再定義したい。ぼくは、留学とは、「海外、国内に限らず、垣根を超えた人の流動によって異文化を理解することすべて」と考える。
たとえば、進学校ではないぼくの高校では、「東京大学に合格することは、親族が東京大の出身者などでないといけない。努力だけでは不可能で、才能が必要。合格者は宇宙人のようなもの」という教育を受けてきた。現代社会の先生が、わざわざ授業でみんなの前でそんなことを言う変わった高校だった。1学年に1000人いるマンモス高校でただ1人東京大学に合格したのだが、教師たちは彼だけには特別に敬語を使っていた人もいた。異様に思えるかもしれないが、事実である。
さて、ここでProgateのメンバーの経歴を簡単に紹介してみよう。
帰国子女→DQN高校→東京大学理系
有名進学校→東京大学理系
有名進学校→東京大学理系
関西随一の進学校→東京大学法学部
中学卒業と同時に渡米→イギリスの大学を中退
DQN高校→東京工業大学(日本一の理系大学)
開成高校(日本一の高校)→東京大学理系
開成高校→ハーバード大学
東大生は宇宙人高校→浪人→同志社大学文系(ぼく)
要するに、この5ヶ月間、ぼくは、当時の高校の先生の言葉を借りれば、宇宙人といっしょに仕事をしたり、飲みに行ったりしていたわけだ。
海外ではなく、京都から東京という国内だが、この体験は、もはや留学と呼んでもいいのではないだろうか?
その証拠に、京都や大阪に帰省したときに、昔のぼくを知る友達によく「お前ほんま頭良くなったなー」と言われる機会が多かった。前提として言っておくと、自分は、中高の大半をサッカーに費やし、おまけに大学受験では失敗している。だから自分は頭が良いはずがないし、いいと思ったことは一度もない。仮説として考えられるのは、この5ヶ月間の間に、頭の良いメンバーに囲まれていたことで、周りに適応しようとして自然と自分の頭のレベルが上がったことである。そして、これは、英語ができなかった日本人が、海外留学を経て帰国してくると「お前英語できるようになったなー」と言われる現象のそれにそっくりではないだろうか。
シカゴ大学経済学部を卒業、「マネー・ボール」で有名になった野球データ予測モデル「PECOTA」の開発者であるとともに、大統領選挙の結果を正確に予測することで有名であるネイト・シルバーも、TEDで次のように言っている。
ニューヨークと外国とで学生を交換する交換留学制度がありますが、率直に言って米国内だけでも十分な差異があります。たとえばニューヨーク大学の学生を一学期間アーカンソー大学(アメリカの地方の大学)で学ばせ、逆も同様にするとか。それを高校の段階でやるのはどうでしょう。実際アーカンソーやテネシーの学校にいる人は恐らく別の州や別の人種の人たちと積極的に交流する機会を持たないでしょう。先程話した教育という要因の一部は大学に行くことで得られる。他では交流する場がなかった人達と混じりあう経験のためだと思います。重要なのはこれがすべて良いニュースだという事です。
シェアハウスのメンバーもProgateと同じように、ぼくがいままで会ってきたことがないような人達だった。
北海道出身→高校卒業と同時に学費を稼ぐために二年間働く→中央大学に進学→フランスの有名大学に留学し、哲学を専攻
群馬出身→高校卒業と同時に引きこもり→ラオスで九九を広め、小さな奇跡を起こしたことで、いろいろ覚醒
出身→東京芸術大学に進学→フランスに留学し、本場の芸術を学ぶだけでなく、若手芸術家の登竜門となるコンテストに入賞
高知県出身→世界半周(世界一周を途中で辞めるという面白経歴)と交換留学の後、東京で長期インターン
留学といえば、多様な留学を支援するトビタテ留学JAPANが有名だが、制度的に国内留学は認められていない。
この経験から、ぼくは、国内留学の枠もあってもいいのではないかと思う。日本には、もっといろんな場所やいろんな人やいろんな考えがいるはずだ。
だから、ぼくは、「おれは世界一周したぞ!、日本には多様性がない」などと訪れた『国の多さ』を自慢し、日本をDisる人生ではなく、暮らした『街の多さ』を自慢し、「世界も日本も、思っているより多様性に溢れている」と自分の視野の狭さと世界の多様性に謙虚な人生を選びたい。
最後に
これから約2年間の留学になる。そして、アメリカ西海岸(シリコンバレー)に来たのも2年ぶりでもある。
「2年前のKoとは違う」というところをアメリカ西海岸にいる人に見せたい。
そして、成果報告のために2年ぶりに帰国したときは、「2年前のKoとは違う」というところを日本にいるみんなに見せたい。タイトルにホームレス大学生と書いたが、アメリカ西海岸の高すぎる家賃が払えないので、アメリカでもホームレスしている。ホームレスは可哀想だということで、現在は、スタンフォード大学の学生寮に居候させてもらっている。東大生詐欺、1期生詐欺の次はスタンフォード生詐欺というわけだ。身の程しらずもいいとこだ。
*ちなみに、スタンフォード生はめちゃくちゃ勉強します。(日曜日の夜12時の光景)どれくらいかというと、大学受験並みかそれ以上。平日はともかく土日も夜中までするのもザラ。こっちの大学生の勉強法の特徴は、1人で勉強しないで2人以上でペアになって勉強する点。もうひとつは、TAがどこにもいてめちゃくちゃ信頼されている点。
追記
えい君、昔は、ワガママ言ってごめんなさい笑
えい君、忙しい中、こんな素敵な場所とかけがいのない時間を作ってくれてありがとう。